1個目の魂のかけら
イズィム
「迷宮は、呪われ、転生させられた者の魂が精霊となって生きる世界。
『魔書事件』の犠牲者達が囚われ続ける魂の牢獄。
封印王が作り上げた、『魔界』
・・・しかし、だからこそ、会えるかも知れない。
『友人』に…そして『あの人』に…
私が魔界に転生することになったきっかけ
それは、あの夢の様な朝の出来事・・・
…まだ、はっきりと思い出せない。
魂を取り戻していれば、あなたに語れるくらい思い出せるだろう。
私と魔書事件の関わりの中に、必ず、呪いを解くカギがある。
・・・あの人との思い出が蘇れば、きっと。」
2個目の魂のかけら
イズィム
「・・・ああ、『魂のかけら』が・・・過去が・・・
私の中に入ってくるのが分かる。
この魂を封じていた楽園守護者の言葉…覚えている?
楽園守護騎士なる者からの伝言を、覚えている?
・・・私の名前を知っていただろう?
私の名前を知っている楽園守護騎士とは誰なのか?
・・・名前といえば・・・そう、私の親友の名前が思い出せた。
彼女の名はイグニス。いつも一緒だった親友。
もし、彼女が魔界に転生しているのなら助けなければ。」
3個目の魂のかけら
イズィム
「イグニスとの思い出がよみがえる…
彼女とは幼いころからのつきあいだった。
好きな場所、好きな食べ物、好きな色…何もかも同じだった。
私たちは、双子のように仲がよかった。
…あの事件。イグニスと早朝の森で会う約束をしていた。
しかし、そこにいたのは、待ち合わせていたイグニスではなかった。
早朝の森で、私を待っていたのは恐ろしい賊の一団だった。
言葉にできない事が起こった。
私は、自分の身を守るために、初めて剣を握った。
そして、知った。
自分の身を守るために、強くならなければならないことを。」
4個目の魂のかけら
イズィム
「過去を取り戻す…辛いわね…けれど、前に進まねばならない…
・・・あの人の名前を思い出すのが怖い…
・・・・・・・
ルブルム…あの人の名前は…ルブルム…
強くなるために、私は、女であることを捨て、騎士となる道を選んだ。
そして、ブレイブハートと呼ばれる領主に仕える騎士となった。
そんな私に、女であることを思い出させてくれたのが、あの人…ルブルム…だった。
…ルブルム…私を愛し、魔書を見せた人。
あの人が…ルブルムが、どうして魔書を持っていたのか。
魔書事件とあの人はどう関係していたというのか…」
5個目の魂のかけら
イズィム
「・・・ああ、熱い・・・
過去はどうして、心を熱くさせるのか…
あの人が…ルブルムがこの魔界の守護騎士になっていたとは…
そう…私に魔書を見せ、私を魔界に転生させたのもルブルムだった。
『魔書事件』…多くの人々が行方不明になったあの事件。
まさか、自分がその犠牲者になろうとは思ってもみなかった。
ただ漠然と、自分だけは大丈夫だと思っていた。
私が『魔書事件』の犠牲者となったのはある朝のこと。
身も心も捧げた、唯ひとりの人…ルブルム。
彼と一緒に迎えた、初めての朝。彼が一冊の書物を差し出した。
それは、『眠ル繭』という題名の美しい模様の描かれた皮表紙の書物だった。
彼は、私のために、その書物を完成させたのだと言った。
私は、彼の言葉に従い、表紙をめくった。まばゆい光と轟音が鳴り響き、
目の前に、見た事もない化け物が現れた。
その『封印王』と名乗る化け物が、私に呪いの烙印を刻んだ。
それからは、今のあなたと同じ。
わけもわからず、この『魔界』を歩き回ることになった。
今、思い出せるのは、これだけ…」
6個目の魂のかけら
イズィム
「あの朝の出来事で
あなたと同じように魔界に引きずり込まれた私は、闘った。
誰かが、力を貸していた。それは、あなたと私のような関係だった。
ただ、それが何者だったか、まだ、思い出せない。
既に、魔界に転生させられていた誰かが、
私に力を貸してくれたことは確かだ。
その人物はまだこの魔界にいるのだろうか?」
7個目の魂のかけら
イズィム
「…そういえば
生前、ルブルムが言っていた。
自分は、『楽園』を作る仕事をしているのだ、と。
あの言葉は、この『魔界』を作ること、
『魔界』に人々を引きずり込む『魔書』を作ることだったのでは?
なんてこと・・・
まさか、彼が、『魔書事件』を引き起こした張本人なの?
そんな…親友だったイグニス…愛したルブルム…
どうして・・・皆・・・どうして・・・」
8個目の魂のかけら
イズィム
「あなたに聞いておく。
私は『結界』から出られないけれど
迷宮探索中のあなたを、時々、助けてあげられそう。
好きな方を選んで。あたしは、どちらでも構わない。
1:時々、魔物の攻撃からあなたを守る
2:時々、あなたと共に魔物を攻撃する
…そういえば、ルブルムは、こんなことも言っていた。
楽園を作るために、『楽園守護者』という組織を作った、と。
それは、この魔界にいる楽園守護者と名乗る魔物たちのことなの?
あの人は…ルブルムは…一体、何をやっていたというの?」
9個目の魂のかけら
イズィム
「…ルブルムは、キジバトの料理が好きだった。
あの運命の朝を迎える前日。ルブルムと一日を共に過ごした。
デジナーレ(昼前のしっかりした食事)とチェーナ(簡素な夕食)の両方で、
キジバトの料理を食べながら、永遠の愛を誓い合った。
その時、ルブルムが言っていた。
キジバトには、記憶力を高める効果がある、と。
永遠を手に入れるために、ふたりの愛を永遠のものとするために、思い出を消さぬために、
キジバトを食べる、と言っていた。
『永遠』…・・・ あの人は、永遠を求めていた。
この『魔界』もまた、消えることなき永遠の世界…
剣王の言葉が本当ならば、あの人は、
『魔界』を作った錬金術師ドラゴーネと、共謀して『魔書事件』を起こしたことに…」
10個目の魂のかけら
イズィム
「…ルブルムが、この『魔界』を作った張本人錬金術師ドラゴーネの仲間ならば、
あの人は、『魔書事件』の全容を知っているはず。
楽園守護騎士として、この魔界のどこかにいるのなら、
ルブルムに会わなければならない。
あなたの呪いを解くために、そして、私自身の決着をつけるために。
・・・もっと・・・もっと強く、強くならなければ・・・
過去に負けない心を持たなければ…」
11個目の魂のかけら
イズィム
「・・・ああ、過去が やり直せない過去が、心を焼く…
……ルブルムは、どこにいるの?あの人は、魔界のどこに…
そういえば、ルブルムは私が使えていた『ブレイブハート』と呼ばれた領主のこと…しつこく尋ねていた。
『ブレイブハート』様の名は、『デジデリオ・ティグレ』。
私に、魔書事件の捜索を命じ、自らもまた、事件の真相を探っていた勇壮なる領主。
ルブルムは、何故、ブレイブハート様のことを知りたがったのか?
それもまた、『魔書事件』と何か関わりがあるのか?
私が魔界に転生した後、シリコやダクロやカソアも転生してきた。
ならば、ブレイブハート様は?
・・・・わからない…
まだ、この魔界には、隠された事実がある
そう、感じる…」
12個目の魂のかけら
イズィム
「『夢の塔』の頂上を目指そう。過去と未来が、私をせき立てる…
この魂を封じていた連中が最後に残した言葉が気にかかる…
『連なる者』とは、どういう意味か?あなたは、誰に『連なる』というのか?
あなたは、私たちと根本的に違うのか?
あなたの『呪い』は特別なのか?
…わからない…まだ、わからないことが多すぎる…
確かなことは、ルブルムと錬金術師ドラゴーネが共謀して『魔書事件』を起こしたこと。
幻の女マシウルが、錬金術師ドラゴーネの妹だということ。
そして、老錬金術師ロレンスが、裏で糸を引いていた、ということ。
その全てに、ルブルムが関わっていた、ということ。
まだ、何も決着がついていない…ということ。
このままでは、何も終わらない
『魔書事件』は未だに続いている。」